事例
中古時計小売1社での実測(在庫777点・輸出候補5,574万円)と、他業種で同じ形がどう当てはまるか。
実測した事例:中古時計小売
社名は伏せます。国内で中古の高級時計を扱う小売事業者での実測です。数字はすべて実際に計測したもので、例示のために作った値はひとつもありません。
出発点
その会社は自社の在庫を把握していました。仕入値も、掲載価格も、在庫日数も社内にあります。社内に無かったのは、その在庫が「いま世界のどこで、いくらで売られているか」でした。
海外顧客が並行輸入で買っていくことは分かっていました。日本の店頭でも外国人の購入が多い。つまり価格差は存在する。ただしどの型番に、いくらの差があるかは誰も公開していません。
測ったもの
12の型番系統について、国内と海外あわせて50の情報源を毎朝読みました。 1件ごとに、出品者・URL・読んだ時刻・適用した為替レートとその公表日を記録しています。
| 測定 | 実測値 |
|---|---|
| 突き合わせできた型番 | 44 |
| 在庫(税抜・照合済み) | 777点 / 20億3,658万円 |
| 日本 → 米国の価格差(中央値) | +9.2% |
| 日本 → 香港(税影響を除去後) | −4.3%、うち4型番は香港のほうが高い |
| 確度の高い帯にある輸出候補 | 156点 / 5,574万円 |
この数字が普通に出せない理由
税込と税抜を混ぜると、答えの符号が変わる
最初の集計では香港が −12.9% 安く見えていました。実際は −4.3% です。香港には消費税が無く、日本の掲載価格には10%が含まれている。同じ「価格」という名前の、違うものを引き算していました。
修正後、16型番のうち4型番は香港のほうが高いと判明しました。最初の数字を信じていれば、その4型番を輸出に回していたことになります。
同じ誤りは米国側では逆に働き、実際の差を9ポイント小さく見せていました。
いまは情報源ごとに税の扱いを必ず宣言させ、取得時点で税抜価格を確定させ、比較はその列しか読みません。
一般的なAIに同じことを聞くと、違う答えが返る
2026年8月20日、対話型AIに同じ型番の日米価格を尋ねました。回答は「両市場はほぼ同水準」。同日に同条件で実測した差は米国が17%上でした。
AIが挙げた2つの数字はどちらも正しい値です。片方は買取価格、もう片方は市場指数で、回答文のどこにもその区別は書かれていませんでした。差の符号が反転し、在庫全体の値付けが変わります。
「消えた出品」を売れたと数えると、9時間で188点が売れる
出品が一覧から消えることを成約の代理指標に使っています。最初の実装では 9.3時間で188点が「消えた」と出ました。検索結果の並び順が入れ替わっただけ でした。
いまは2回続けて不在を確認した時だけ計上し、再出現した時点で数え直します。
出す前に31項目を通す
上の誤りはすべて、エラーを出さずに、それらしい数字を作りました。だから人が見て気づく前提は捨てて、実行可能な検査に変えています。
レポートは31項目の検査を通らなければ生成されません。付属品を時計として数えていないか、型番の枝番を落としていないか、といった項目です。
検査が正しい挙動で落ちた時は、検査のほうを直します。緩めません。 実際に 3つの検査が正常なデータを誤って弾いており、いずれも検査側を修正しました。
この事例で移せるもの
型番があり、複数の販売面に同じものが並び、国ごとに価格が違う商材であれば、そのまま同じ形が使えます。中古時計に固有の部分は情報源の一覧だけです。
他の業種では、どういう形になるか
以下は実測ではありません。上の事例のような数字はまだ出していないので、 数字は書きません。書いてあるのは、その業種で「何を見て、何が変わり、どこで間違えるか」だけです。
架空の実績を並べれば読み物としては良くなりますが、この会社は 出どころの無い数字を出さないことを売っています。 自分の事例ページでそれをやったら、上の実測もろとも信用されません。実績が出た順に、ここを実測に差し替えていきます。
家電・PC周辺機器のEC
見るもの ―― 主要モール3〜4面と、直販サイト。同一型番の掲載価格、ポイント還元込みの実質価格、送料、在庫。
変わる判断 ―― 値下げするかどうか。週次で全商品を一律に下げるのではなく、 実際に負けている型番だけを動かす。
この業種の落とし穴 ―― ポイント還元とクーポンで、表示価格が同じでも実質価格が違います。 表示価格だけを比べると、勝っているつもりで負けます。還元率は掲載ページに出ているので、実質価格の列を別に持ちます。
化粧品・サプリメント
見るもの ―― 正規販売面に加えて、フリマ・オークション・越境ECの出品面。出品者名と価格。
変わる判断 ―― 希望小売価格を割る出品が出た時に、どの販路から漏れているかの当たりをつける。出品者名と数量の推移が手がかりになります。
この業種の落とし穴 ―― 並行品と正規品が同じ検索結果に並びます。 容量違い・旧処方・海外仕様を同一商品として数えると、相場が実態より安く出ます。型番ではなくJANと容量表記まで見る必要があります。
アパレル・スニーカーの二次流通
見るもの ―― 国内外の二次流通プラットフォーム。サイズ別の直近取引帯と出品数。
変わる判断 ―― 仕入れるか、いくらで出すか。サイズごとに相場が別物 なので、商品単位の平均では判断できません。
この業種の落とし穴 ―― 出品が消えても売れたとは限りません。 出品取り下げと成約が同じ形をしています。2回続けて不在を確認するまで成約に数えない、という扱いがそのまま必要です。
自動車部品・産業資材(B2B)
見るもの ―― 代理店・商社のオンラインカタログ、海外のディストリビューター、公開されている入札結果。
変わる判断 ―― 仕入れ交渉と、見積の妥当性確認。「相場より高いのでは」を、相手が誰でいくらかという形で持ち込めます。
この業種の落とし穴 ―― 掲載価格が数量帯で変わり、多くの面で「要問合せ」になっています。取れないものを取れたことにしない ―― 空欄は空欄として出す、という扱いが特に効きます。
食品・飲料の海外展開
見るもの ―― 進出先の現地小売・現地ECでの、自社商品と競合商品の店頭価格。
変わる判断 ―― 現地の卸値と、輸出するかどうか。現地でいくらで売られているかは、日本から見えません。
この業種の落とし穴 ―― 為替と現地の税で、同じ商品の「安い高い」が月内で入れ替わります。 どのレートをいつの時点で当てたかを残していないと、先月の資料と今月の資料が比較できません。
これ以外の業種でも、型番なり品名なりで同じものが複数の面に並び、国や販路で価格が違うなら、形はそのままです。 お問い合わせから、実際の商材でお試しいただけます。
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